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「あ、ファイさん」
「…おはよう」
桜色の飛竜を抱いてカインがファイに駆け寄る。気付いてくれたことが嬉しいのに気恥ずかしくてファイは思わず下を向く。
「どうしたの?気分悪い?」
「いや、そういう訳じゃ…」
「ああこの子?リオレイアだけど大丈夫だよ、大人しい子だから」
「あの…だから」
「抱っこしてみる?」
はい、と渡された小さなリオレイアを断ることができず、ファイは半ば流されるようにリオレイアを抱き上げる。
とくりと小さな鼓動と共に体温が布越しに伝わる。
「あ…」
幼体だからなのか、堅そうな外見とは裏腹にふにゃりとした感触が指先から伝わる。
呆気なく壊れてしまいそうな小さなリオレイアにファイは息を飲んだ。
「ファイどうだ?リオレイアを触った感じは」
そう言ってきたのは、カインと同様にファイに気が付いたケビンだった。ファイが可愛いと答えると以外だよなとレンがケビンの影から覗き出す。
エルベがファイにいつものでいい?と聞いてきたので頷くと美舟がファイの大好きな笑顔でおはようと笑いかける。
すると酒場の外から凄い音が聞こえてきた。
何事だと外を見れば赤と緑の小さな生き物が酒場目掛けて走り込ん出来たのだ。
勿論正体はパズルとチャチャだ。
「放っていくなんてひどいっチャ!!」
「ご主人さまちゃんと起こしてニャー!!」
ぎゃんぎゃん騒ぐ二匹のおかげで一気に賑やかになった酒場でファイは思った。
(カラフルだ)
自分の白黒の世界が息づいた気がした。
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