14
イャンクックの頭に大剣を突き立てたまま、沈黙が流れた。しかし、レンの足音がその沈黙を破りカインに走り寄る。大剣を杖の様にし立っていたカインを容赦なく殴った。
「カインテメェっ…大馬鹿野郎が!」
「…」
抵抗もせずに尻餅をつくカインを支えつつ、ケビンは何も言わず成り行きを見守った。そうした方が良いと思ったのだ。
軽く溶けた腕を庇いもせずにレンは怒鳴った。
「もう…もうあんなヒデェ狩方しねえって言ったろ!?言ったよな!?あぁ!?」
そのまま胸倉を掴み上げレンは悲痛な声を上げる。カインはどこか人事の様にその光景を見ていた。
「……レン、取り敢えずクエスト終了の狼煙をあげよう。皆ボロボロだ」
ケビンがレンの手を掴み制止する。それでも少しの間カインの胸倉を掴んだままだったレンは舌打ちしながらも手を放した。
尻餅を着くように座り込んだカインを一瞥するとレンはケビンと少し離れた所で狼煙を上げる準備を手伝う。
カインは暫くぼんやりそれを眺めていたが、思い出したようにチャチャとリオレイアをみた。
「…」
「な…なんだっチャ…」
警戒するチャチャの首根っこを引っつかみリオレイアごと手繰り寄せるとカインは膝の上に置いた。
「チャ!?」
小さく悲鳴を上げたチャチャに構わずカインはポーチを探る。回復薬はほとんど駄目になってしまっていたが、辛うじて二つ、無事だった。片方のコルク栓を開けるとチャチャに手渡す。
「自分で飲めるでしょ」
「だ、誰がニンゲンの薬なんて…」
「…元々はアオキノコと薬草だよ」
原材料を教えてやるとチャチャはうっと詰まる。そしてお面を少しずらしてちびちび舐めるように口にする。
カインはそれを見るともうひとつ開け、リオレイアの口許に持って行く。
リオレイアは臭いを嗅ぐ。安全なものと確認したのだろう、口を開けた。少し流し込んでは飲み込むのを待ちまたそれを繰り返していると、レンとケビンが戻ってきた。
リオレイアをみてケビンは口を開く。
「リオレイア亜種か…酷いことをする」
「亜種?」
「通常とは色の違う個体さ、通常のものと比べればこちらのがずっと強く、また取れる素材も珍しい。最近は子竜を密猟し、そいつをまんま市場に売り出す奴もいる…こいつは多分、その密猟者に連れて来られた奴だろうな」
「ヒデェ…」
レンはリオレイアを見つめながら呟く。
リオレイアは結構回復したらしく、カインの腕の中で寝息を立てていた。
「…最近、密猟者共の間である薬が出回っている」
「…?」
カインが緩慢な動きで顔を上げる。次のケビンの一言に、血が少なくなってぼんやりしていた頭がぞっとするほど覚めた。
「何を使っているかは知らんが、成体に使えば一生苦痛に苛まれる毒に、子竜に使えば成長を止め、成体に成れなくなってしまう恐ろしい薬だ」
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