12
「いっつー…ん?」
涙目のカインは二人に加勢しようとして、ふとチャチャの背中をみた。
小さな飛竜が弱々しく息をしていた。放って置けば近いうちにこの子竜は息絶えてしまうだろう。しかし、カインがそれに見入ったのは死にかけているという事実ではなかった。
「これは…リオレイア!?」
背中の未発達の毒刺や顎に突き出た刺が無惨にも削ぎ落とされていたが、その形状は間違いなくリオレイアだった。だがその色は淡い桜色だ。
「どうして…」
「こいつに手を出すなっチャ!!」
いきなり起き上がり子リオレイアを抱きしめ、カインから数歩離れたチャチャは、武器を構え牽制する。
「お前が、お前らがこいつをこうしたんだっチャ!!」
「え?」
「お前らニンゲンがこいつにへんなの飲ませたせいでこいつは苦しんでるんだっチャ!許さないっチャ!!」
恐らく泣いているのだろう、チャチャが鼻声で一気にまくし立てた内容をカインはゆっくりと吟味する。
カインたちがこの飛竜に何かを飲ませたことは勿論ない。しかしチャチャが嘘をついた様子もない。
カインが詳しく話を聞こうとした時だった。
「カイン逃げろぉ!」
レンの切羽詰まった声と共に、クルペッコとイャンクックが一斉にカインとチャチャに突っ込んで来たのだ。
二頭はレンとケビンの攻撃で脚を引きずるまでに弱っていたが、怒りに我を忘れて攻撃対象を弱者…チャチャに変えたのだ。
チャチャの眼前に二頭の憤怒の表情が迫る。
「チャっ…!?」
飛竜を抱きしめて動かないチャチャに、容赦なく嘴での猛攻が襲い掛かった。
チャチャは小さく目をつぶった。しかし、衝撃はいつまでたっても来なかった。
ぱたりと、何かがお面に滴り落ちた音がした。
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