D×D Bypar | ナノ




10

レンが気を反らしてくれている間にカインはポーチから瓶を取り出し、中身を一気に飲み干す。支給された応急薬が、口の中で血と混ざり微妙な味になる。
瓶を投げ捨てたカインはクルペッコの背後に回ると尻尾に切り付ける。肉の食い込む感覚の後、クルペッコが苦痛の声を上げる。
それに便乗して、ケビンがクルペッコの腹を突き上げる。しかし、尖端が掠めただけで決定打にはならなかった。
クルペッコが三度、尾を振るう。今度はカインも避けきる。
しかし、奸計に嵌まったのはカインだった。
クルペッコが勢いを殺さず体をもう半回転させ、回避直後のカインに尾を当てる。
カインはガードさえ出来ずに直撃し数メートル吹き飛ばされる。

「うあぁっ!」
「カイン!っちぃ!」

ケビンが駆け寄ろうとするとクルペッコが火打ち石をならし突っ込んでくる。ケビンが火の粉を盾で防ぎバックステップを踏むと攻撃体制に入る。

その隙を突かれた。

クルペッコは急激な方向転換を行い、そのままケビンに突進する。火の粉がケビンに降り懸かり、火打ち石での殴打を直に受けてしまう。

「ぐあ…っ!」

己の肉が焼ける臭いと共にやって来た激痛にケビンの口から苦悶の声が洩れる。
やや離れた所から援護射撃を行っていたレンは回復弾を撃ち込むか、狙撃を続けるか一瞬だけ迷った。

「っくそ!」

そう吐き捨てて、Lv1の徹甲榴弾を装填して余り狙わずに撃った。
闇雲に打ち出された弾はクルペッコを掠め地面に着弾し少し間を置き爆発する。それが命取りだった。

なんとクルペッコはレンが打ち出した弾から、レンの居場所を推測しそこ目掛け口から粘着性のある吐瀉物を吐き出したのだ。
酸性の強い粘液がレンの腕にかかり、装備もろとも溶かす。

「ああぁぁあっ!!」

腕が少しずつ溶けていく恐怖と今まで感じたことまない苦痛に引き攣った悲鳴がレンの口から迸しる。
しかしクルペッコがカイン達の痛みが引くのを待ってくれる筈もない。
火打ち石をリズミカルに鳴らしながら左右にステップを踏む。それを2・3回繰り返すと甲高く鳴いた。

「クアァァァァァァァア!!」

そう、イャンクックの鳴きまねで。

「しまっ…!」

ケビンは遠くから聞こえる羽音に息を飲む。薄桃色の飛竜が飛んでくるのを見た。

「チャアアアアアアア!?」

……同時に、間抜けた悲鳴がカイン達の耳に入った。



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