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「やぁらまらのむっ!」
あのあと気が付いたらベロンベロンに酔っていたレンを完全に酔い潰し(うるさいから潰した方がいいと言ったカインは容赦なかった)ケビンに背負って貰ってから、4人は帰路についた。
ケビンの背中で爆睡しているレンに、3人は苦笑した。
「本当に酒、弱いんだな」
「あはは、昔よりましですよ」
カインの一言にケビンは目を丸くする。
「ちょっとまて、俺がこいつに飲ませたのは一杯だぞ?」
「レンは三杯で潰れます」
きらーん、という効果音つきで言い切ったカインはどこか爽やかでケビンは引き攣った笑いを零す。
少し後ろを歩いていたファイはそんなやり取りを黙って聞いていた。
「…」
「ん?どうしたファイ?」
ケビンには微妙なファイの変化が分かるらしい、黙って歩きつづけるファイの方へ向く。
両手でアイルーを抱き抱えているファイはこてんと首を横に傾げた。
「なんだ、無意識か?」
「…うん?」
「疑問で返すなよ…」
小さく溜息をついたケビンは再び前を向く。カインはファイの歩調に合わせ、隣を歩いた。暗い夜道と言うのに、白煉瓦が僅かな光を反射し少し明るかった。
「今日は相席ありがとう」
「大したことない」
会話終了。
(は、話が…続かない…!!)
気まずさばかりが募り、カインはいたたまれなさに苛まれる。
そんなカインの心情に感づいたのか、ファイが口を開いた。
「…楽しかった」
「え?」
「大勢でご飯食べたの、久しぶりだったから…」
寝むたそうな声が、柔らかく響く。何故、とかどうして、とか言う台詞がカインの喉の奥で消えていく。
代わりに出た台詞は。
「また、ご飯一緒に食べようよ」
目を見張ったファイに、カインは笑った。
生きていればできる約束をしよう。
その約束が、自分の命を繋いでくれるのを信じて。
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