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「そういやファイは誰かと組んでんのか?」
各々が食事を楽しんでいるとき、唐突にレンがアプトノスの肉を素揚げした物を口に入れたままそんなことを聞いた。今日はよく喋るなとカインは思いながら二人のやり取りを眺め、ふとケビンの表情がやや固いことに気が付いた。
「…何故?」
「よかったら一緒に組まねえ?」
「悪いが断る」
間髪入れない即答だった。虚を突かれたレンは文字通りいきなり顔面にペイントボールをぶつけられたような顔になったし、カインも断られるだろうと思ってはいたが、まさかここまではっきり断られると思わなかったので驚いていた。
ケビンはやっぱりか、と言った風貌で小さく溜息を着いたがそんな表情を見せたのはほんの一瞬だった。
「おー、残念だったなレン。お前さんもカインと一緒のフラれ組だ」
「んなぁ!?」
そう言ってレンを茶化し、激怒したレンを面白がりながらからかうケビンを尻目に、カインはファイを見た。
若干俯きがちな所を除くと先程とは何ら変化は見られない。ファイより変化を見せているとしたら、彼女の膝の上を陣取っている赤いアイルーだった。
短めの尻尾が膨らんでおり、レンに向かってフーッと威嚇の声を上げている。
そんな彼(?)の頭を撫で、落ち着かせているファイはやはり寝むた気な瞳を下に落としているくらいしか変化はない。
「あの…すいません」
「何が?」
「レンが余計なこと言ったみたいで…気分悪くされましたか?」
「いや…私もあんな言い方はなかった。悪い」
声のトーンを変えず謝ったファイにカインはどうすればいいか分からなくなった。ここまで何の変化も見せないのはある意味凄いんじゃないかとさえ思う。
「…そんなことより、私はお前の敬語に気分が悪くなる」
「はい?」
「…………」
自分が気にしたことをそんなことと一蹴されただけでなく、敬語のが嫌だと呟き黙り込むファイに、カインはますます混乱する。
じゃあ、どうしろと。
しばらく考え込んだカインは恐る恐る口を開いた。
「えっと、じゃあ…ごめん」
その一言に、ファイはどこか満足げに頷いた。
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