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気を張っているカインなどお構い無しにレンはケビンに話し掛ける。
「おっさん相席頼んだのか?」
「あぁ、一応知り合いだ。まぁ座れって」
「そうする」
レンは(端から見れば)ぼんやり突っ立っているカインを引きずり席に着く。ケビンとその人は隣に座っていた。レンはケビンの隣に座ったのでカインは必然的にケビンの正面に座ることになる。
つまり、カインの隣には必然的に"ケビンの知り合い"が座ることになるのだ。
ケビンはそうそうと"彼女"の背中を叩いた。
「こいつはファイリアス・エリンシェン。愛称はファイだ」
よろしく、と言ったファイから、カインは目を離せなかった。
橙色の目に、右頬には引き攣った傷もカインの記憶のままで。何より、カインの思い違いでは無いという決定的な証拠まであるのだ。
ファイの膝にちょこんと座った、赤いアイルー。赤トラと呼ばれる毛並みのアイルーは非常に珍しかった。
カインの視線に気が付いたのだろう、どこか寝むた気な目がカインに向けられる。
「…私の顔に何か付いているか?」
「へ?あ、や、その…すみません」
初対面(取り敢えずそう言うことにしておく)だと言うのにガン見してしまった自分に、不躾にも程がある!!とカインは内心自分を罵った。
それをカバーするように、ケビンが口を挟む。
しかし、メニュー片手に発射されたケビンの"援護射撃"は、全くもって有難迷惑なものでしかなかった。
「ああ、ファイ気にするな。そいつはお前さんに惚れちまったんだよ。一目惚れってやつさ」
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