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・・・」
「・・・胸糞悪いね」
「こらファイ、そんな汚い言葉どこで覚えた」
「レンが言ってた」
「マネするんじゃありません」
隣で座っていたファイに軽く拳をぶつけながらケビンは内心、その通りと賛同していた。
目の前には泣き疲れて眠っているレンと、虚空に視線を彷徨わせたままのカインが寄り添って座っている。
今回、得た物よりも失ったもののが多すぎた。
「・・・狩りの道理が通用しなかったね」
ファイの抑揚に欠けた声が響く。その通りだ。
命を懸けて守った村から「もう二度と帰ってくるな」と言われて泣き顔をさらに歪めたレンと、それでも視線だけを向けてぼんやりとしていたカイン。
秋野が亡くなった時も感情に任せて泣き叫んだレンに対し、濁った眼で秋野の亡骸を見つめ続けたカイン。
自分が原因だと言われても、石を投げつけられても動かなかったカインに対し、カインがされたことに全力で怒り狂ったレンと。
結局失ったのは二人で部外者の自分たちにはどうすることもできなかったのだ。
「・・・なぁファイ」
「ん」
「俺な、結構大人なはずなんだが」
「うん」
「自分が思ってたより、無力な餓鬼だったみたいだ」
そういって俯いて目頭を押さえたケビンにファイは胸中で尋ねた。
貴方が無力な子供なら、私は一体なにになるの
六花が静かに、しんしんと降り注ぐ。 まるで、大きな隙間を埋めようとして、溶けてしまうかのように
その花は、無力だったのだ。
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