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「お黙りっ!!」
不毛な合唱は、秋野から響き渡った声に掻き消された。
「秋野さんっ!」
「ばぁちゃん!」
ファイとレンがそろって声を上げる。ケビンが静かになさってくださいと言う傍らいてて・・・となんでもないように上体を起こした秋野に一同が騒然となる。
「たった一人の餓鬼相手に・・・何喚くんだい・・・見っともない」
「村長喋らないでください!お怪我に触れます!」
「あんたらが余計なこと言わなけりゃあ・・・あたしだってね、大人しく逝けたんだ・・・ったく・・・年寄りの体にとんでもないもんぶち込んでくれおって・・・」
そう悪態をつく秋野はもうすでに限界だった。老体に大型獣専用の矢が刺さったのだ。助からないのは誰の目にも見えている。秋野にだってそれは分かっていた。
「余計なことに手ぇ出すもんじゃないねぇ・・・レン、カイン」
ふっと疲れたように息を吐き出す。その口からはごぽりと血がこぼれ出た。
「・・・たくさん、世界を見ておいで」
「・・・ばーちゃん」
「・・・っ」
「ああ、こんな悪餓鬼でも・・・あたしの孫にゃ・・・上等・・・すぎ・・・じゃ、な・・・」
小さく息をついて、秋野は目を閉じる。それきり動かない秋野に、レンは喉が裂けるほどに絶叫した。
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