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「・・・そうか、あやつが勝ったか」
「ええ、しかし・・・」
秋野の呟きに、ケビンがちらと背後を見る。まるで、心ここに非ずという表現さえ霞むほどぼんやりとしたカインがただ立っていた。
今は、ギルドの迎えを待っているところだった。もう間もなくと言う伝書鳩を空に返し竜車を待つばかりだ。
「しかし、今回は世話になったのう」
「・・・その言葉はカインに言ってやってください。俺たちは本当に見ていただけなんですから」
「それを言ったら今の奴にはとどめにしかならんて、代わりに言われておくれ」
「・・・そう、ですね」
詰まるようにそう言葉を吐き出したケビンに、秋野はすっと近寄った。
「・・・お前さんには伝えておくかの」
「?何を?」
「崩竜と対を為す覇竜の話と、業の薬のことじゃ」
「は、りゅう・・・だと・・・?」
瞠目するケビンに秋野は簡潔に、わかりやすく小声で伝えるとすすすと離れる。
「そ、それは本当ですか!?」
「・・・真偽は定かではあるまいがな。わしは真実と・・・!!」
そう言いかけた瞬間、どすりと鈍い音がする。ケビンはもちろん、少し離れたところでいたカイン、ファイ、レンにも、当事者である秋野にも何が起こったのかわからなかった。
「ぐ、ふっ・・・」
「秋野さん!!」
狩猟用の矢が貫通し、秋野がぐらりと倒れる。地面にその体が付く前にケビンが素早く支えるが血は止まらない。
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