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「ファイ!」
「っ!」
その頃、ファイを追いかけていたレンはようやくファイを捕まえたところだった。捕まえた、と言うのは語弊がある。と言うのもファイはこけていたのだ。
「ほら、カイン落ち着いたら剥ぎ取りすんだろ?あんま遠くに行くなよ」
「・・・」
「“狩った獲物に対して亡骸だけ置いておくのはその生き物に対する侮辱であり、意味なき殺戮である”・・・お前の信条だろ?」
沈黙を返すファイに、レンはため息をつく。
「・・・後で、謝りにいこうな」
「レン・・・」
「お前も俺も、あいつにひどいこと言っちまったもんな」
レンは崩竜(カイン)の存在を否定した。
ファイは父(ウカムルバス)への謝罪を否定した。
普通の人間であれば通っただろう理屈も、カインと言う中途半端な存在には理不尽な言い掛かりにしかなりはしないのだから。
「あいつ優しいからきっといいよって笑うだろうけどよ。それじゃダメだろ?一番しんどいのは、あいつだから」
「・・・うん」
ファイは頷いてレンと共に来た道を歩き出した。
しかし、その日二人の謝罪の声がカインに伝わらなかった。声が届かなかった、と言うのが適切な表現だろう。
ケビンに支えられたカインの目は、死体の様に濁っていた。
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