22
「カイン、終わったぞ」
茫然と座り込んだままのカインにレンが声をかける。気の利いた言葉など、今のカインには毒にしかならないだろう。だからと言っていつもの調子など出るはずもない。
「・・・」
「カイン?」
恐らく、カインは喋ったのだろう。しかし、最後の悲鳴か小競り合いの最中にかはわからないが声が出てはいなかった。もう一度、とファイが聞く。矢張り声は出ていない。
ファイが再びもう一度、と言う。声は出なかったが、唇の動きで分かった。
『ごめんなさい』
カインは、そう口を動かしていた。その瞬間、ファイが反射的にカインを打つ。
「ふっ・・・ざけるな!!」
「・・・」
「それは、今お前と戦った命に対しての侮辱だ!二度というな!」
そう言ってから、ファイは今自分のしでかしたことにはっとする。そして、逃げるように踵を返して行ってしまった。
「おいっファイ!」
「レン、ファイを頼んでもいいか?」
「・・・わ、かった」
実のところ、ファイの気持ちはレンにもケビンにも痛いほどわかっていた。ハンターとはさまざまな理由や目的があるものだが、自分が狩った命に対しての謝罪は命に対する侮辱である、と言うある種の暗黙のルールのようなものがある。それに、命を狩るからにはその命も背負う、と言う覚悟さえいる。自分が奪った命に対しての謝罪は逃避に等しい。
しかし、今のカインにはそれは必要なことに思えた。
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