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「っああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
カインの口から迸ったそれは咆哮ではなく悲鳴のそれで。
それでも、構えた刃を解くことはなくて。ウカムルバスも、突進を止めはしない。
狙うは、一点。
限界などとっくに超えた腕に万力を込め、カインは一気に大剣を突き出す。
その切っ先はウカムルバスの脳天をとらえた。
――――――――――――――――――その感触を、二度と忘れることなどできはしないだろう。
カインが貫いたのは、かつてウカムルバスがカインを救うために自らつけた額の傷だった。
自分の勝算が、かつて自分を救った箇所だなんて、あまりにも滑稽で皮肉だ。
と、ウカムルバスの前足が動いた。
背後に潜んでいた三人があわてて駆け寄る。最後の力でカインを仕留める気か。そんな心配は懸念に終わった。
砕けた爪が、カインの頬をなでるように、滴る血を拭うように動く。
「・・・グ、ォ」
「っ!」
その小さな音(こえ)とともに、前足が落ちる。ずん、と音が響いてそれっきり崩竜は動くことはなかった。
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