D×D Bypar | ナノ




19

「グオオオオオアアアアアアアアアアアアアア!!!」

凄まじい轟音と共にウカムルバスはその姿を現した。分厚い氷がまるで紙でも破るかのようにあっけなく砕け散る。しかし、それと同時にカインはひるむこともなく抜刀する。
大剣と顎がぶつかり、火花が散る。

勢いよくはじかれたものの難なく着地したカインは眼前へと迫るウカムルバスへ閃光玉を投げつける。

―――――――――――さむいよう
―――――――――――そうぐずった自分に、父はぐるりと鳴いて風よけとなってくれた。

「グアアア!?」

のけぞるようにひるんだウカムルバスの腹の下へ、カインは滑り込む。はじかれそうな刃を無理やりねじ込んで腹を裂く。しかしそれはかすり傷程度でしかなく、ウカムルバスののしかかりの予備動作に気付いて逃げる。しかし、左腕が逃げ遅れ、破砕音にも似たいやな音が響く。一瞬遅れてきたのは叫びだしそうなほどの激痛。

―――――――――――とうさん、みてみて!
―――――――――――彼らにとってどうでもいいはずの、父の姿を模して作った雪人形に、ほめるように頬を舐めてくれた。

カインは激痛を無理やりやり過ごすともう一つ閃光玉を投げる。ひるみはしなかったがウカムルバスの視界から自分の姿を消すのには十分だった。
勢いよく走りこみ右後ろ脚へと全力で大剣を叩きつける。通常であればはじかれただろうその攻撃も、崩竜の力を覚醒させているカインが放ては分厚く進化した筋を鱗もろとも引き裂いた。
痛みにひるんだウカムルバスにカインは追撃を仕掛けようと動いた。しかし、それより早くウカムルバスの左前脚がカインの右顔面を殴りつける。
あたったのは爪の先ではあったが大木のような前足についているような爪だ。カインの右顔は潰れた。頭全部がふきとばなかったのは不幸中の幸いだろう。
ぼとりと、自分の顔から落ちたそれを見たとき、カインの中で何かが決壊した。

粉々に砕けた、今まで自分を崩竜足らしめる崩天玉が雪の上に落ちていた。


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