18
雪原に、カインは再び立っていた。
動くものの気配は、今のところない。しいて言うなら背後に三つ、自分を送り出した影が控えているぐらいだろう。
カインの、ウカムルバスとの対決を頑として首を縦に振らなかったレンに対し、以外にもケビンはカインを送り出した。
「・・・勝算は、あるんだな」
「なんとなく」
「そうか・・・なら行って来いよ」
「え?」
「なんでだよ!?」
「当たり前だ。こいつは頭に血が上って崩竜に喧嘩売る訳じゃない。ハンターとして狩りに行く、そして生きて帰るための勝算だってある。背中押すには十分すぎる理由だ」
「でも・・・っ」
「なあに、カイン一人で戦わせるが、一人で行かしはしない。邪魔にならないところで俺たちが待機して、本当にやばくなったらカイン担いで全力で撤退だ」
「ケビンさん・・・」
「絶対死なせはしないさ、パーティーだろ?」
そう言ってケビンが茶目っ気たっぷりに片目を瞑ったのが、もう遠い昔に感じる。
カインは全神経を使ってウカムルバスの気配を探る。凶悪な雪原に、吹雪はない。あとは右目が教えてくれる。
同胞であり、父であり、今は狩るべき「竜」の存在を。
カインはそっと目を閉じる。にわかに聞こえる風の音と、自分の心音が異様に響く。
どのくらい続いたのだろう。刹那なのかもしれないし、永遠と続くのかもしれない。レンが、そう思った矢先だった。
[ 185/200 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]