17
その言葉に放心状態のカインに、レンは。
「お前は、「こっち」のハンターだ」
手を差し伸べて。 崩竜に、止めを刺した。
このことだった、秋野が言っていたことは。
レンの手をとったカインを見て、ファイは昨夜の言葉を思い出す。
秋野はきっと、何もかも知っていたのだ。知っていて、カインがこちらに来てくれるのを信じて何も言わなかったのだ。
ケビンは無力だった。真実を隠されることに苛立ちを覚えるくらいには。
レンは無力だった。崩竜を受け入れられないくらいには。
ファイはもっと無力だった。
だって、今も立って成り行きを見届けるしかできない。手を差し出すことさえできない。
ケビンはどことなく気まずげにカインに近づく。
「あー・・・そのだな・・・すまん」
「ほんとにです」
「すまん」
謝罪したケビンにカインは少しむくれていた。もう調子はすっかりいつもどおりだろう・・・表面上は。
右目はまだ人外であるままだし、胸のうちはまだおちついていないのだろう。それでも普段どおりに振舞うカインはしたたかだ。
「そういうお前もぼろくそ言ってたけどな」
「う・・・ごめん」
申し訳なさそうに謝ったカインは、すぐに表情を引き締める。そして、とんでもないことをその口から放ったのだ。
「僕はもう大丈夫です。ただ、わがままなのは分かってるんです・・・父さんと、ウカムルバスと、一対一で戦わせてください」
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