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「ちく、しょう・・・畜生だって・・・?」
「そうだよ、お前はウカムルバスどころか、人間にも値しないただの『獣』だ」
レンの金色がギッとカインを睨み付ける。カインのそれより遥かに強い輝きに満ちている。
「・・・俺は、お前がどう思ってようが・・・お前は俺の家族だよ」
「・・・」
「そりゃちょっとウカムルバスかもだけど・・・それでも、お前は人間だ!」
堕ちてほしくない、とレンは思う。
大切だからこそ、レンは崩竜たるカインを否定した。これ以上自分の言葉で傷ついてほしくなかった。
カインは気づいていないだろう。左目が、彼の「人間」の心が悲鳴を上げて涙を流していることに。
ずっと葛藤していたのだ、カインは。どっちつかずで、でもどっちも大切だから。
今は、自分の育ての親を狩らないといけない現実に混乱しているだけで。
そして分かってほしかった。この場に、カインを迫害する存在はいないと。
それでもカインがどちらかじゃないとと思うなら嫌われても、憎まれても「崩竜」としてのカインを否定する。
レンは、両方でいてもいいと言えるほど強くはなかった。無力だった。
人間であるカインしか肯定できない無力ゆえの、覚悟だった。
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