15
長い沈黙。その果てに、カインは語りだした。
「・・・僕は、この雪原に捨てられた。レンの両親に引き取ってもらうまでは・・・あのウカムルバスが、僕の親でした」
「なん、だと・・・!?」
ありえないと呟いたケビンを睨み付けながら、カインはぽつぽつと語る。
「普通なら、凍死ものでしょうね。僕も不思議に思います。なんで生きてたんだろって・・・父さんが、僕にこれをくれたからなんです」
そう言って、先ほどケビンが乱暴に触れた右目をいたわるように触れる。それに呼応するかのように右目の銀色は煌いた。
「・・・それ、何?」
「崩天玉・・・ファイなら、聞いたことくらいあるでしょ?」
崩天玉、ウカムルバスが体内で生成する結晶物で強い固体からでもごく稀にしか取れない素材だ。それが、今まで人間(カイン)の体と同化していたのだ。
言葉も出ない三人に、聞きたがったのはお前達だろうと言わんばかりにカインの口は止まらない。止まらない、堰を破壊して止まらないダムの濁流のように。
「父さんたら、まだ赤ん坊だった僕の右目に小さいとはいえこんなの入れて・・・死ぬとか思わなかったのかな?でもまあ生きてたから結果オーライなんですけどね。それ以来、僕はウカムルバス達と共に生きてきた。残酷な共食い、生存競争に負けて死んでく仲間を見ながら、僕と父さんは生き残り続けた。仲間の肉を食らって、仲間を屠って」
「・・・カイン、もういい」
「僕は、人間に引き取られるまで自分は崩竜と信じて疑わなかった。他者も、仲間も、全て屠るのが普通だった。『白銀の日』がくるまでは」
「もうわかったから」
「全部知りたいといったのはあんた達だ!!!」
静止の言葉をかけたファイの言葉を切り捨てるようにカインは怒鳴った。感情が高ぶっているのか、銀色の瞳がにわかに金色味を帯びている。これではまるで
人の形をした、ウカムルバスだ。
「ふざけるなよ再三言えと言ったと思ったら今度は自分達がつらくなったからやめろって?ははは、何様だあんたら。ああそうそう人間様だったねごめんごめん忘れてたよ」
「カイン、もうやめろ」
「そうだよねあんたたち自分は人間ですってはっきりいえるもんね、こちとら迫害覚悟で人里に飛び込んで記憶までないふりして同胞守ってたってのに、いやだって言ったのによりによって父さんを狩るとか」
「もういいと言っただろう」
「本当にいい加減にしろ惰弱な生き物の分際でーーーーーーーーーーー!!」
「っふざけんじゃねえ!!」
そう叫んでカインを殴ったのは、レンだった。
よろけたカインの胸倉を掴んで自分で引き寄せる。
「お前は今どっちだ!ウカムルバスか、ハンターか!?どっちかはっきりしやがれ!」
「うるさいな!強い固体が狩る資格を得られる!僕は狩る側だ!」
「違う!それじゃ畜生とかわんねえ!!」
その一言にカインは面食らう。
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