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カインは、はくはくと魚のように口を動かして、しかしその口からは意味のない吐息だけが漏れている。顔は蒼白で血の気がない。しかし、右目は銀色を放ちながら存在を主張していた。
「・・・別に、お前さんをどうこう使用とは考えちゃいないさ。ただ、状況が状況なんでな」
「ぼ、僕、何も、覚えてな・・・」
「白を切るな!!」
ケビンの怒号にカインは身を竦ませる。もういいと静止しようとしたファイとレンを睥睨ひとつで黙らせてカインの肩を掴む。
「いつもなら、言えるときでいいって言ってやれる。でもな、今!この場にいるやつとお前の故郷の人たちの命がかかってる!知ってることでいい、教えてくれ。お前はなんだ!?やつとどう関係あるんだ!!?」
ファイでさえ見たことのないケビンの形相に、しかし、カインの震えはもう止まっていた。
その代わりケビンを見上げたカインの目には疑いと怒りがない交ぜになったような感情しかなかった。
「・・・言ったら、信じてくれるんですか」
「内容による」
「言ったら、ウカムルバス討伐をやめてくれるんですか」
「それは無理だ」
「だったら話すことなんてない!」
「ごねるな!他の生死が関わってるんだぞ!」
「こっちだって父さんの命が掛かってる!!」
そう言ってからカインはしまったと表情を固まらせた。しかしそう思ったところでもう遅い。
「・・・二人とも、聞いたな」
「・・・」
「・・・き、いた」
ファイは沈黙していたが、レンは戸惑いながらにうなずく。今や三人の視線には疑いと戸惑いしかなかった。
「・・・何が、あった?」
もう答えないなんて選択肢はないぞ。
ケビンは言葉の外でそう言っていた。カインは唇を噛む。薄皮が破け、血がにじんだ。
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