D×D Bypar | ナノ




8

招かれた秋野の家の中で五人は中央の囲炉裏を囲んでいた。

「・・・レンが言うにはウカムルバスの暴走周期を『白い日』と呼ばれるそうですが」
「うむ、そうじゃの」

ケビンの一言に秋野は重々しくうなずく。

「なぜ、この近辺ではウカムルバスの暴走周期などがあるのでしょうか」
「ほかの土地ではないということかえ?」
「ええ、ここに向かう前に中央図書と観測所の情報を洗いざらい見させていただきました。ほかの雪原、氷山などに生息ウカムルバスには暴走周期所か暴走さえない。人里近くに下りてくるのは基本的に餌を求めてか繁殖期だからだと」
「・・・そうじゃの、ウカムルバスを狩ってもらう主らには知っておいて貰わんといかんの」

そういう秋野がどこか苦々しいことに、ファイは気がついた。それは、今から話す内容が自分たちにとって非常に都合の悪いものだから?
しかし、ファイのそんな疑いを秋野は裏切った。苦々しい表情はそこからではないらしい。

「もともとこの村も、ウカムルバス達の縄張りだったのじゃ」
「な・・・!?」
「ばーちゃん!?」

どうやらカインとレンも知らなかったらしい。レンなど身を乗り出して続きを促している。

「この雪山はの、ほかの極寒地域に比べ寒く、厳しい環境じゃ。ポポでさえ生きていくのが難しいくらいにの。ゆえに自然淘汰に負けきらんだ、しかし生き残るには弱いウカムルバス達が行き着く土地なのじゃよ」
「・・・つまり、掃き溜めのようなところでしょうか?」
「うむ。しかしそれは逆に弱い固体とて子孫を残せる確率が高くなるということがある。そして、弱い固体を親に持つとはいえまれに強者に相応しき力を持つものが生まれるのもまた叱り。その力の暴走が『白い日』なのじゃ」
「・・・気性が荒くなる、というよりは有り余る力を制御できなくなる、と?」
「さよう。ウカムルバス一種しかおらぬがゆえ起きる共食い、屠り合い、それをして尚力を発散しきれぬ固体がおる。弱い固体言えどわしらからすればどちらも災害、それが暴走なぞしてみよ、ひとたまりもないわい」

そこまで言い切って秋野はお茶を一口飲み、ふうと一息つく。そして真剣な顔で目の前の「狩人」達に言ったのだ。

「今年、そこの大馬鹿二人が出て行ってからすぐに観察所から連絡が来ての・・・観測史上最大の固体が発見された」
「・・・今回の標的は、そいつですか」
「すまぬとは、思っておる。あれは13年前の『白銀の日』の掃討作戦の唯一の生き残りじゃ」

取りこぼしたわしらの咎を背負わせてしまうが、どうか頼まれてくれないだろうか。
そう言って頭を下げた秋野を見てケビンとファイ、そして秋野のこんな姿を見たことがないレンは息を呑んだ。


カインだけは、手のひらに爪が食い込む位拳を握り締めていたが。


[ 175/200 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -