D×D Bypar | ナノ




8

結局、ファイが追いかけてみたものはものの見事にアグナコトルにリンチされてアイルーたちに運ばれていくメルの姿で。なんとかご満悦のトモが捕獲することによってクエストはクリアした。

「な ん で ガンナーが突っ込んでいくの・・・?」
「えへへー」
「いつものことだよ。いっつもメル落ちるの」
「・・・よく生きてるね」
「「当然(!!)」」

そんな会話をしている三人は近場の孤島に来ていた。ここにナルガクルガがいる。それはギルドの方でも確認済みだし、千里眼の薬で大物がいるのも確認している。
問題は、先ほどのようなことがおきないかどうかだ。
ファイは正直いやな予感しかしていない。しかし、知らぬ間に来た汚名をトモとメルは見事に返上して見せた。

「メル、どうせ誤射するなら貫通弾にして。そっちのが避けやすいし一転集中のがあたるでしょ」
「あいさー!じゃあトモとフライはメルのとこになるちゃんこないようにしてね?頑張ってなるちゃんに当てるから」
「誤射った時点で叩き切るから自分で回避しなさい」
「えー!理不尽!」
「いつもじゃん・・・フライ、トモの逆サイドから突っ込んでね。お互いにナルガの気散らしあおう」
「あ、あぁ」

フライじゃない、という突っ込みは二人の真剣味を帯びた雰囲気によりできなかったが、不安が薄れた。それと同時に視界に入ったのは漆黒の体。ナルガクルガだった。

「それじゃ・・・」
「GOーーーーーー!!」

トモの掛け声をメルが乗っ取って貫通弾が発射される。ナルガクルガに命中する前にファイとトモが茂みから飛び出した。トモが左を、ファイが右を疾駆する。

「ふっ」
「うりゃっ」

右サイドの尻尾の付け根をファイの太刀が、左サイドの顔面をトモの戦斧が強襲する。突然のことに対応し切れなかったナルガクルガの頭にわずかに遅れてメルの弾丸が直撃する。
神経を逆撫でされたナルガクルガは尻尾から鋭利な棘を発射する。狙いはトモ・・・だったがトモは避けるでもなくそのままナルガクルガの左サイドに引っ付いて斬撃を繰り出し続けた。
棘がトモを、貫かなかった。

「だめだよ!トモに棘出しちゃ!」

なんとメルが散弾を使いすべての棘を打ち落として見せたのだ。そのまますばやく装填を行い再び貫通弾を発射する。
ファイは後ろ足への攻め手を緩めはしなかったが、驚愕した。
先ほどまで誤射し放題だったメルの力量と、攻撃があたるぎりぎりを超えて尚攻めを引かなかったトモの胆力に。

信頼関係なんだろうな、とファイは思う。

トモはメルが棘を全部打ち落とすと信じて攻め続けた。
メルはトモがもし誤射してしまっても避けると信じて散弾を選んだ。

羨ましい、と思ったファイにナルガクルガのしなやかな尾が振り下ろされる。一瞬の隙だったが。

「フラーイ!伏せてねっ!」

身動きの取れなかったファイの耳に届いたメルの声と、目の前を通り過ぎていった手甲榴弾が尾を弾き飛ばし、アシラ装備特有の青と、かの雷獣の青が漆黒を両断する。

「フライ、あんまり手焼かせないでよ」
「・・・ファイだといってるだろ」

ふうとため息をついたトモに、ファイは悪態で返した。

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