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そんなカインの心境など知らず、レンとファイの言い争いは終わらない。
苛々する。
それを察したかの様に二人の不毛な言い争いを終わらせたのはケビンだった。実際ケビンに他意は無かったのだが。
「今回、ちぃとばかし難しいクエストになった」
「難しい?」
首を傾げたレンに、ケビンが口を開く。そこから発せられた台詞にレンとファイは動揺した。
「雪山奥地に崩竜ウカムルバスの討伐、場所はマシロの村。カイン、レン、お前さん達の故郷だ」
「ま、じかよ」
レンは驚愕の余り目を見開く。そのままケビンの目を見た。
「早過ぎる、だろ」
「何がだ」
「『白い日』だよ、まだ十三年しか経ってねえ!」
「暴走期か。ウカムルバスが凶暴化する正確な周期はわかってないんだろう?多少はズレても可笑しくはないさ」
「そ、そうだけど・・・」
困惑するレンとなだめるケビンを見ながら、ファイはふとカインが何のアクションもしていないことに気がついた。なんとなしにカインを見る。
レンと違いカインの表情には困惑は見られない。しかし彼が浮かべていた別の表情にファイは少なからず驚いた。
困惑でもなければ、故郷を思う哀愁でもない、完全に瞠目仕切り、どこを見るでもない視線は下を向いていて。
硬く握られた拳とうっすらと掻かれている冷や汗に。
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