D×D Bypar | ナノ




6

「ほう、お前さんらあんな辺境から来たのか」

所変わって酒場にて。
ケビンはジョッキに並々と注がれた麦酒を煽り、二人をまじまじと眺めた。
引っかき傷だらけのカインと宥めすかされたレンがうん、と肯定した。

「あそこ一番強いのがドスランポス位しかいなくてよ」

レンが唇を尖らせお冷やを口にする。その様子を見ながらケビンは麦酒を一口含み、口を開く。

「けどそれだけ平和ってことだろう?いいことじゃないか」
「そうだけど、俺はもっと強くなりたいし色んなモンスターだって見たいんだよ。危険なのは分かってるけど」
「けどかなりしんどいぞ?毎回死体になって帰ってこれない奴だっているし、最初の内は実入りだって少ない。ハイリスク・ローリターンだ」
「それも覚悟の上だって!リオレイアはともかくイャンクックだって見たことないんだぜ?どっかの誰かさんは見たらしいけど」

ぼんやりと酒場を眺めていたカインはレンの台詞に間の抜けた表情できょとんとする。

「お前は見たっつったよな、リオレイア」
「あ、うん」

カインが頷くとレンはずるいでやんのとへそを曲げたらしくそっぽを向く。それを苦笑してみたケビンは感心しながらカインを見遣る。

「しかし初心者で大地の女王相手に生き残るなんぞ中々やるな」
「いえ、僕は何も出来なかったんです。助けてくれた人がいて…凄かったなぁ」

昨日の事の様に思い出せる。リオレイアの威圧感、指一本動かせない恐怖、それらを一閃した紅い刀身。

「…もしまた会えたならって、勢いでレンについて来たんです」
「ほーう、この御世代にえらく純粋な奴だな」

ケビンは感心しきりにカインの頭を撫でる。そんなことをしてもらったのは幼少期以来だったカインは照れ臭そうに頬を掻いた。

「じゃあ、僕らはこの辺でおいとまします」
「え?もう行くのか?」

レンは立ち上がったカインを見上げ、呆気に取られる。カインは呆れ顔をレンに向け、溜息混じりに最初の目的を言った。

「だって僕ら、まだ住むとことか決めてないし宿すら取ってないんだよ?」
「やば、忘れてた」

レンが途端に焦り出す。カインがどうするのと口に出す前に、それまで二人のやり取りを見ていたケビンが口を開く。

「それだったら良い物件があるぞ?俺とご近所さんになっちまうが」
「えっ、マジ!?」
「ああ、ちょっとした寮みたいなんだが家賃は安いし部屋は広い。値は張るが上の階なら景色もいい」

かっかっと笑うケビンにレンが俺そこがいいとカインに訴える。

「ありがたいんですけど…でも迷惑じゃないですか?」
「全く迷惑なんかじゃないさ。むしろ俺はお前さん達が近くにいると賑やかでいいと思ってるしな」
「だったら俺達とパーティー組もうぜ!」

レンが勢いだけでそんな事をいう。カインは無理だろうなと思った。ハンターは常に死と隣り合わせだ。自分達のようなビギナーと組んでくれる訳がないとカインは考えていた。考えていたのだが。

「おう、構わんぜ」
「いやった!よろしくおっさん!」
「お…おっさんて…」

目茶苦茶あっさりと、ケビンはOKをだした。
…どうやらケビンは、カインが考えていた以上にお人よしだったらしい。

「じゃあ、これからよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくな。カイン、レン」

ケビンが差し出した手をカインががしりと握り合った。



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