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「この、お馬鹿ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
エルベの怒号に、三人は縮み上がる。
ここはサウィナズス最大の医療機関の、一般患者用の病室だ。その一室に有名なギルドの受付嬢の怒号が響いたのだ。他の患者はたまったものじゃない。
イャンクックが音爆弾を食らったときの心境を体験してしまった三人に構わずエルベは更に畳み掛ける。
「しかもクシャルダオラを見つけた時点で何で救援要請呼ばなかったのなんでろくに調べもせずにクエスト行っちゃうのなんで痛いときに限って無理するの挙句の果てに雪山で寝るなーーーーー!!」
息継ぎもせずに言い切ったエルベにレンが思わずティガ顔負けだと呟くと無常な拳骨がレンの脳天を強襲した。
のたうつレンを見て口を噤んだカインとファイは顔を上げられない。怖くて。
「全く・・・心配させるんじゃないわよ・・・」
そう言ったエルベの声が少し弱くて、二人は顔を上げる。
その瞬間拳骨が振ってくる。結局ファイもカインもレンと同じ末路をたどる羽目になった。
「だからお馬鹿なのよっ!」
それは雪山での件なのか今のことなのかよくわからなかったが、それより早くエルベが出て行ってしまったため真相は分からずじまいだ。
入れ替わりに、ケビンが見舞いに来た。
「おー、派手にやられたなあ」
「見舞いの第一声がそれかよおっさん」
のほんとしたケビンの一言にレンが突っ込むが、ケビンはおっさんじゃなくておじ様がいいなあと笑うだけだった。
「とりあえず事の顛末教えろよ」
むしろそれが目的だったらしく、代表してカインが事情を説明する。カインがあまり覚えてないところはレンとファイが補足しながらケビンに伝える。
「・・・で、僕たち最後に寝ちゃって」
「・・・よく生きてたな」
「ティガレックスがあんま寒くないとこに運んでくれたっぽい」
あの後、寝てしまった三人をティガレックスが運んだらしい。気球で観測していた学者が連絡してくれギルドナイトを寄越してくれたそうだ。そのときまでティガレックスはカインたちのそばでじっとしており、ギルドナイトが来たとき砂漠方面へと飛び立ったらしい。
とはいえ凍死寸前だったカインたちを見てナイトたちが大層焦ったと聞いたとき、三人は全快したら誤りに行こうと決めたそうな。
カインたちの話を相槌を打ちながら聞いていたケビンは、きゃあきゃあ騒ぐ三人を尻目にふと、思った。
(・・・懐かれすぎや、しないか?)
聞けば、子供のティガレックスではなく成体の、野生のティガレックスだ。通常彼らが弱った人間を捕食しないなどは、ない。
少し感覚は鈍っていたが、これは異質なことではないのだろうか。
看護婦にしかられる三人を視界に入れながら、ケビンは見舞いの品であるりんごに手を出した。
(こいつぁ・・・面倒なことだな)
三人に、僅かな憐憫を込めた視線を送って。
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