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ぼろぼろの柄を力の限り掴む。
「カインに・・・触るな」
使える筋力を全開にする。悲鳴を上げる体を無視する。
「カインを・・・!」
宿る感情は怒りに近い、でもそれよりも。
「傷つけるなあああああああああああああああああああああああっ!!」
無くしたときの恐怖が上回る。それより遥かに、守りたいと、思った。
まるで弾丸のように飛んでいったデットリィタバルジンは見事にクシャルダオラの胸部に突き刺さる。悲鳴が上がりその途端、クシャルダオラを包んでいた風は霧散する。
デットリィタバルジンは、ゲリョスの持つ毒袋をその刀身に仕込んである。ぼろぼろになったことでその毒袋がむき出しになり、より大量の毒をクシャルダオラの体内に流し込むことに成功したのだ。
そして、クシャルダオラは内部からのダメージに弱い。毒により風を発生させる能力が低下したのだ。
「っ痛・・・!」
「ファイ!」
しかし、代償はファイの手にその毒が付着してしまったことなのだが。
「っカインしっかり決めやがれ!やんなきゃ男が廃るぞこの野郎!!」
肺が悲鳴を上げることなどかまわずレンは叫ぶ。
それで少しでも、クシャルダオラの気を引けるなら。勝機が見つかるなら。
「ぶっ飛ばせ!!」
「わかったぁっ!」
カインの負けず劣らずの大声に、レンは馬鹿野郎と言いながらも不思議と笑みが浮かんだ。
ああ、いつものカインだ。
あの、のんびりしててそのくせ人を振り回す、そしてとんでもなくお人よしのカインだ。
そう思ったから。
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