D×D Bypar | ナノ




24

しかし、それは不必要な事になった。

「さ、っせるかああああああああああああ!!!」

振り下ろそうとしたクシャルダオラの右前脚に二本のナイフが突き刺さる。
わずかに毒気を帯びたそれは、レンが作った毒投げナイフだった。
ファイとレンが身体の動くところを全力で使い、投げる。
クシャルダオラの意識が二人に向いた瞬間カインは下から上へと大剣を振りぬいた。
脚の裏が見事に割れる。やはり身体を支える部位には神経が多く通っているのだろう。クシャルダオラが悲鳴を上げた。
レンとファイは無我夢中でナイフを投げる。砕かれた半身がその度悲鳴を上げるが知ったことではない。
あばらが内臓に刺さっているのもわかっている。自分の体のことだ、わからない訳が無い。口に血の味を溜めながら、それでも二人は手を休めない。
少しでもクシャルダオラの意識をこちらに向ける。そうすればカインは攻撃するだろうし上手くいけば、毒がクシャルダオラを蝕んでくれるだろう。
二人が唯一できる援護だった。

カインはいささか不機嫌だった。
なんで、邪魔するんだろう。
しかしそのおかげでこの龍を壊しやすくなったのは事実だし、まあいいか。
そう思った瞬間、聞こえにくくなった耳に、やたら鮮明に聞こえた。

「踏ん張れカイン!男だろ!」
「カイン!」

レンと、ファイだ。

そう思い出した瞬間、全身が悲鳴を上げて苦痛を訴えだした。

「っぐ・・・!」

再び膝を付くカインに、クシャルダオラが気づかないはずが無い。
その光景に、レンとファイは絶望しか浮かばない。ナイフは、もう無い。鋼龍の硬い前脚が、振り上げられて、カインがつぶされる。もうその光景しか見えない。
カインは苦痛と風圧で動けない。自分たちも。
見たくないと目をそらしたファイの視界に、ぼろぼろになってしまった片手剣が映った。
デットリィタバルジン。
これのもつ能力を思い出した瞬間、ファイは一瞬痛みを頭から追い払った。



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