D×D Bypar | ナノ




23

カインは再び雪を蹴る。
間合いを詰めたのは一瞬だった。今度はクシャルダオラの頭目がけて大剣を振り下ろす。
しかし、クシャルダオラはそれを紙一重で交わし、眼前のカインの左肩に噛付いた。
そのまま食いちぎろうとしたクシャルダオラより遥かに早く、カインが柄をクシャルダオラの左目に叩き込む。ぐちゃ、と眼球がつぶれてその苦痛に思わずカインを振り落とす。左の眼窩から血を流すクシャルダオラにカインは三度、哂う。

「・・・っは」

口から吐息のような声が漏れる。それが変わったのは、カインがクシャルダオラの右翼の付け根を叩き切る勢いで大剣を振り下ろしてからだった。

「ははははははははははははははははははははははははは!!!!!」

哄笑、だった。
ともすれば、ティガレックスやクシャルダオラの咆哮が幼稚に聞こえてしまうほどの恐怖に襲われる、無邪気ゆえにどす黒い、哂い声。
それは、人間の発する邪気だからか、それとも普段心優しい男の喉から発している哂いだったからか。あるいは両方か。
身がすくむなどと言う表現では足りないほど、今のカインは畏ろしかった。

「ふぁ、い、ファイ・・・!」

翼膜を切り裂いたカインを見ながら、ファイはレンが呼ぶ声を聞いた。
見ると、レンは投げナイフと何かで何かを作っていた。

「レン・・・?」
「あいつ、もう、もたねえ、ぞ」
「え?」
「暴風の中に、突っ込みすぎた。関節、砕けるぞ」

簡潔なレンの答えにざあっとファイの顔から血の気が引いた。そして、レンの作っているものが何か気づいて自分が持っていた材料を全部、ポーチごと渡す。
二人ともこの場から動けない。しかし動かずカインの負担を軽くしなければならない。
それに必要なものを、レンは作っている。
なら、それを使うのは自分の役目だ。

ファイは回復薬グレードの中身を、まだ軽症の左腕にぶっ掛けた。



ぎしぎしと悲鳴を上げる自分の関節に、カインはうるさいなあと、他人事のように思った。
不思議と痛みはない。ただ、ちょっと音が聞こえにくくなったくらいだ。そんなことよりも。
どうやったらこの龍は壊れてくれるんだろう。壊さなきゃいけない。本能がそうしたいって叫ぶもの。

更に踏ん張って切り込もうとした瞬間、カインの膝がばきんと音を立てて、力が抜けた。

あ、こけそう。

それだけ考えて、カインは自分の頭めがけて振り下ろされる前脚を見た。

あ、つぶされる。

それだけ考えてカインは大剣で迎え撃つ準備をする。

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