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オオアギトを、逆手に持ち変える。まるで、ナイフでも扱っているような軽々しさだった。
「グォオオオオオオオオオオ!!?」
突っ込んできたクシャルダオラの胸へと何のためらいもなく叩き込み、その感触に再びカインはにたりと哂う。柄を握る右手が風に裂かれたが、痛みが脳まで届かないほどに高揚していた。
ぐち、といやな音を立てて引抜かれた大剣には大量の体液が付着していた。ばたばたと落ちる血が、白い雪に華を咲かせる。
これだけされてクシャルダオラが激昂しない理由など、あるのだろうか。
三度、咆哮。それは間近に居たカインの鼓膜を完全にぶち抜き、眼前の人間がのた打ち回る様をクシャルダオラに見せるはずだった。
カインの耳から、血が流れる。しかし、カインはのた打ち回る所か膝を付くことさえしなかった。
首筋を伝う血を、張り付く髪を、鬱陶しく思ったのだろう。カインが罅の入ったレウス装備の頭防具を乱暴に脱ぎ捨てる。
ようやく見えたカインの目に、ファイとレンが息を呑む。
蒼天を切り取ったような青い目はそこにあった。左目には。
しかし、その目さえ歪んだ愉悦に濁っていて、右目は。
残酷な白銀が煌いていた。
何故、だ。何故やつがここに居る。
やつは今、力を蓄えていたはずだ。
いや、やつじゃない。しかし、この人間は何だ?まるで、やつではないか−−−−−−−−
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