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防具は露ほども役割を果たさなかった。
ネブラ装備も、ガルルガ装備も粉微塵に砕け、ファイとレンの身体には幾多もの裂傷と風圧による摩擦での火傷が無数に刻まれた。ボウガンも片手剣も、ぼろぼろだった。
それだけならこの二人は立ち上がる。しかし、人体の構造上それは不可能となっていた。
骨が、ティガレックスの後脚の二の舞の状態だった。
一応、回避行動を取っていたため全身骨格が複雑骨折などと言う最早選択肢が死ぬしかないと言う最悪な状況にはならなかった。
しかし、暴風に巻き込まれ完全には回避できず、ファイは左肩を中心とした左上半身、レンは右足を中心に右下半身が完全にイカレたのだ。
さらに悪いことに、まともに風を受けていないはずの反対半身さえ、節々がやられ動かない。
『あー・・・こいつ後脚一番酷いけど、全身罅いってるな』
数刻前のレンの台詞を思い出しあれはこれか、とファイは苦笑する。
地に這い喘ぐ二人の人間に、クシャルダオラはとどめをさすために再び浮き上がろうとした。
しかし、それはできずに終わる。
オオアギトによる打撃で殴り落とされたのだ。
「カ、イン・・・!」
レンがそう呼んだのは、カインその人だった。
あの、全てを巻き込まんほどの暴風の中立っていて、奇跡的に無傷だったのだ。
あまりに動かなかった為、クシャルダオラでさえ失念していたのだ。
ともかくカインが無事でよかったとほっとする前に、レンは違和感に気がついた。
カインが、おかしい。
何故おかしいのかとかどう違うのかとかわからなかった。それは、ファイも同じだった。
しかし、気づいた。気づいてしまった。
「・・・!」
「ひ・・・っ!」
悲鳴を、上げそうになった。
怒るクシャルダオラにではない。
にたりと、まるでその真白の容姿には似合わないどす黒い笑みを浮かべたカインに。
そう、自分より他者を優先させてしまうほど、愚かで暖かいやさしさが、掻き消えていたことに。
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