D×D Bypar | ナノ




19

ふわり、と軽やかにクシャルダオラが浮かび上がる。見ていた先には、レン。
その動作にファイはとっさに叫んでいた。

「レン避けてっ!」

その声にレンは反射的に横へ飛びずさった。その瞬間、先ほどまでレンの居た場所に風の塊がたたきつけられる。分厚く積もった雪がいともたやすく弾け飛ぶ。ティガレックスの後脚をつぶしたのはこれだ、と考えてぞっとした。
クシャルダオラがレンの方へ向いた瞬間、ファイは片手剣を渾身の力で、切りつけるというよりは叩き付ける。しかし、纏っていた風が緩衝材の変わりにでもなるのか、ファイの手に変な感触だけ残して弾かれる。
弾かれる、というよりは流された、の方がしっくりくる。
少し体制を崩したファイをじろりと見て、クシャルダオラはそちらへ意識を向ける。攻撃態勢に入る前にレンは貫通弾Lv.2を撃つ。たいしたダメージは無かったがファイを体制を整えるには十分な一瞬を、レンは稼いだ。
レンとファイ、お互い立つ位置が対極しているため、クシャルダオラは標的を定められない。それでも纏う暴風は立っているのがつらいくらいだった。

ファイが再び、今度は腹を狙う。前脚を振り上げたクシャルダオラの右翼にレンが鉄甲瑠弾Lv.1を打ち込む。苛立ったように鼻息を荒げたクシャルダオラの腹を、ファイが連続で斬撃を叩き込む。

連携という小賢しさが、クシャルダオラの逆鱗をなでた。

再び咆哮を上げ、先ほどとは比にならない高密度の暴風を纏う。気候が不安定な雪山が、どんどん黒い雲を集める。気圧が下がったのだ。
不安定な場所の気圧を下げてしまうほどの力に、ファイはひるんだ。
立ち位置が少し離れていたにも関わらず、レンは立ち竦む他無かった。

視界が、白く染まる。

「か、は・・・っ」
「っあ゛・・・」

何がおきたのか、ファイもレンもわからなかった。
気づいたら、雪の上に、息をするのも辛いほどの重症を負って倒れていた。
悲鳴さえあげられず、痛みさえかなり遅れてくるほどの速度で、クシャルダオラに突っ込まれた、としか考えられない。
風だ、と朦朧とする頭でレンは思った。
自らに高密度の風力・風圧を纏って、めちゃくちゃな方向へ働く力を御しながらクシャルダオラはファイとレンに突っ込んだのだ。
まるで、自らが一つの災害だとでも言わんばかりに。


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