D×D Bypar | ナノ




18

「何してる!早く武器を!」

赤い人間が、青い人間と白い人間にそう叫ぶ。わかりにくいが、形状的には雌だろう。
あれは、少し厄介そうだ。


自分たちを睥睨する鋼龍に完全に飲まれただろうカインとレンにファイが鋭く叫ぶ。レンは慌ててジャギットファイアを構えるが、カインはオオアギトには手を伸ばさず、ただただクシャルダオラを見ていた。

「カイン!」

ファイが叫ぶ。しかしそれをかき消さんほどの咆哮が雪山を揺らす。
金属を引っかくような、風鳴りのような、はたまた甲高い女の悲鳴のような。
そんな形容し難い音が鼓膜をぶち抜かんと響き渡る。
−−−−あんなの間近で聞いたら脳まで割れる!
ゆれるネブラ装備の裾を見て、ファイはぞっとする。
実は、一度だけファイはクシャルダオラと戦ったことがある。
眼前のそれより遥かに小さかったのに、咆哮も、あれより遥かに劣るのに、それでも彼女は退散せざるを得ない状態にさせられた。
つまり、負けた。

(ああもうだからいやだったのに!)

忌々しい記憶しかないこの古龍種にファイは舌打ちする。
ファイの態度が見えていたのだろうレンは、自分の装備をちらりと見る。
ガルルガ装備。イャンガルルガから取れる素材でできたこの防具は聴覚を保護するのに適している。先ほどの咆哮も、少し前のティガレックスの咆哮もある程度マシだったのはこれのおかげだと言っていい。
しかし。

(役に立つ、はずねえだろ)

ボウガンを握る手はいやに汗ばんでいて、ともすれば手放してしまいそうになる。
それほどに、レンは恐怖を覚えていた。



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