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風が、少し強くなる。
入り口付近にいた三人と一頭は、流石に冷えると奥のほうへと移動していた。今度の移動ではティガレックスは大人しく、しかし少し距離をとりながらついてきていた。つぶれた脚以外はレンの丁寧な処置とティガレックスの脅威の自己回復能力でほとんど治りかけていた。ある程度治るまで少し見ていようといったのはファイで、目を丸くした二人にふいとそっぽを向いてこういった。
「・・・ここまできてほっとくのも、無責任だよ」
まったく、律儀と言うか真面目と言うか。
二人が苦笑した、そのときだった。
「!」
「グルルルル!!」
カインの両肩がびくんと跳ねると同時に先ほどまで少しうとうとしていたティガレックスが弾かれた様に飛び起き、威嚇する。
風が、にわかに強くなる。
一人と一頭の視線の先は、洞窟の出口。吹き込む雪の量が増えている。レンとファイにはそれしかわからない。
理解する間はなかった。
風が、圧倒的な暴力と化して吹き込んでくる。
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
その途端にティガレックスが前足と目を真っ赤に染めて咆哮した。
レンとファイが突如浮かび上がった警戒色にうろたえる。
カインは衝動的に走り出す。レンの呼ぶ声が聞こえたがかまいはしなかった。
洞窟を出た瞬間、目も開けられないほどの暴風が吹き荒れる。そんな状態にも関わらずカインの目はその姿をはっきりと捕らえていた。
黒金の巨躯、鋭利さの目立つ容姿。そして、従えるかのようにまとう突風。
鋼龍クシャルダオラが、静かに、しかし荒々しく、降り立った。
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