D×D Bypar | ナノ




14

「いだだだだだっ!!」
「ちょ、大人しくし、ぎゃあっ!」

弱弱しくも噛付いたり前足をバタつかせるティガレックスに、カインとレンは辟易していた。
ファイの人間離れした怪力によって洞窟内へと移動したはいいが、入り口付近でティガレックスが起きてしまい何してんだと言わんばかりに暴れだした。いくら弱っているとはいえ、体躯が人間のそれを遥かに凌駕している前足を振り回されたらハンター言えどたまったもんじゃない。
現に、レンはガンガン(ティガレックスからしたらバシバシ程度なのだろうが)前足で殴られて頭から流血しているし、カインも尻尾の付け根辺りで挟まれていた。ファイはと言うと逸早く察しさっさとその場から離れ、近づいてきたギアノスを一掃して、何処かへ行ってしまっている。

「ガァッ!ッグ・・・」
「ああもうほら落ちつ・・・ぎゃーーーーーーーーー!!」
「うわああああレーン!!あだっ」

ガブリと噛付かれ悲鳴を上げるレンに叫ぶ以外できないカインの後頭部をうるさいと言わんばかりに張っ倒し、ファイはティガレックスとレンを強引にひき剥がす。
甘噛みレベルだったのか、涎塗れになるだけで済んだレンを一瞥し、ファイは治療まだだねと、生暖かい視線を送る。

(・・・自分で言ったこと位、実行してよ)

何も言い返せない二人など視界に入れず、ファイは再びため息をついた。未だ威嚇し続けるティガレックスの前に、生肉を放り投げる。
先ほど出て行っていたのはこの暴君と名高い竜と、無謀にもその竜を助けようとする馬鹿二人と腹が減った自分の為にふもとまでポポとガウシカを狩りに行っていたからだ。
ぐるぐると喉を鳴らすティガレックスは、脚さえ動けば今にも飛び掛らん勢いだった。普通ならその姿に、大半の人間は足がすくむだろう。
しかし、今日のファイは機嫌が悪い。非常に、自分歴史上もっとも最高に最悪に、悪い。

「・・・食べて」
「ウウウウウ・・・!」
「食え」
「グルルルルルル・・・!!」
「食えって言ってるでしょ」
「ガ!?」

呻いてばかりいるティガレックスにとうとう痺れを切らして先ほど放り投げた生肉を拾い、ティガレックスの口に突っ込んだ。
その光景にカインも、レンも、生肉を突っ込まれたティガレックスも固まる。固まざるを得ない程の邪気を、ファイは発していた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・さっさと、食え」

どろりとしたその声音に、二人と一頭の背筋に冷たいものが走ったのは言うまでもない。

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