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それは、頂ですべてを見下ろしていた。
しかし頂ははるかに高く、見下ろした先は小さくぼやけてろくに何も見えない。
否、彼の君臨者はこの光景が存外好きなのかもしれない。
自分以外、何もいないような錯覚を覚えてしまうほどの殺風景ともいえるこの光景が。
ばきり、と音を発して自らの体が砕ける音を聞いていた。
ばきばきと、分厚い氷を砕くような音は暫く響いていた。
それが唯一自分がいると言う証明であると主張するかの如く。
やがて音がやんで、クシャルダオラはその白銀の身体を天へと晒す。
さて、愚かな侵入者でも排除してやろうか。
瞬く間に黒く硬質化した身体をなじませるように二、三度羽ばたいてから、クシャルダオラは飛翔した。
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