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少し、沈黙が起きた。レンが黙り込み、ファイもカインも何も言わないわずかな時間が流れた。しかし、レンは黙ってティガレックスに近づく。
「っレン・・・」
「まあ、正論っちゃ正論だわな」
「ならなんで」
「悪ぃけど、俺はハンターで医者なんだよ」
いつものやけになって返すそれとは違い、ただ静かにそう言ってレンはティガレックスに触れる。
ファイの台詞を聞いて、それを噛み砕くように理解して。その上でレンは否定したのだ。
真逆だと、見ていたカインは思う。
ファイは長く狩人だったから、弱った生き物に対する情は侮辱だと思うから。
レンは長く医者だったから、弱った生き物にもう一度生きる力を与えて当然だと思うから。
正直ここでどちらが正しいと聞かれたら、きっとカインには答えられない。
どちらも正しくて、どちらも間違っていると思うから。
問答も不必要だと諦めたのか、ファイの小さなため息が吹雪きに飲まれて消えていく。
カインの曖昧な思考も、雪と一緒に白く消えた。
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