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ざくざくと、分厚く積もる中腹の雪を踏み締めながらカイン達は歩いていた。
否、違うか。ざくざくリズミカルに前へ進んでいるのはカインとレンであってファイはと言うと、不器用にえっちらおっちら、たまにこけてはカインかレンに助けて貰い前へ進んでいる。
最初は雪は嫌いだとか、慣れてないからだとか自分に言い聞かせる様に言い訳していたが、15回目の転倒以降、だんまりを通していた。
「………カイン、なんかフォローしてやれよ」
「今考えてるよ、もう」
黙り込むファイを尻目にこんな会話がなされているのは二人の秘密である。当然の事ながら。
気まずい空気の中、ざくざくと言う単調な音が雪に吸い込まれて行く。
途端、ズシャッと何か滑る音がカインとレンの耳に届く。もうこの音も32回目だ、とカインとレンは振り向いた。振り向いて、ぎょっとする。
「な、なに?」
ファイは気づいていないらしい。瞠目している二人についていけず、ふと自分の後ろを見た。
そこには、雪に埋もれて微動だにしないティガレックスの姿があった。吹雪く雪山故に腐食が遅れているだけかと思いきや、抉られた腹はまだ少しだけ動いている。
自分の躓いたものに仰天し声がでないファイを尻目にカインとレンはすぐに瀕死のティガレックスに近づいた。
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