6
準備が整った三人は少し積もっている雪を踏みしめ目的地へと足を進める。
解けかけて少し水っぽいそれは簡単に脚部防具を水浸しへと変える。不愉快そうに眉をひそめるファイとは違いレンとカインはどこか楽しそうだった。
「懐かしいね、雪」
「だなあ・・・あの村年がら年中雪だらけだったもんな」
そんな二人の会話にファイはひっそりと耳を欹てる。比較的南寄りの地域で生まれたファイにとって雪は障害以外の何者でもない。
「よく雪合戦したよね。レンが大きな雪球作ってその度自滅したり」
「うるっせえ、カインだって鎌倉が崩れて生き埋めになってたじゃん」
「あはは、中で火くべてたからね・・・雪かきしてたレンのお父さんに気づかなくて二人で埋まってたりしたの覚えてる?」
「あー、あったあった」
骨が折れたかと思ったよなーと笑うレンにファイは思わず歯軋りする。生憎というか幸運というか、その音はレンとカインに届かなかった。
そんな胸をよぎった不穏な感情に気をとられたからなのかそんな感情をもてあますファイに神が天罰を与えたのか。
よりによって二人の前で、ファイは雪に足をとられ派手にこける。
笑われると、思っていた。
「ちょ、ファイ大丈夫!?」
カインの驚いた声に自分も驚き思わず目を丸くして、二人を見た。
カインだけじゃない、レンも心配そうにファイを覗き込んでた。
「ぱっと見た所派手な外傷はねえな」
「ほんとに!?よかった・・・」
「頭ぶつけてねえ?」
「え?あ、うん・・・」
「なら大丈夫だ、行こうぜ」
カインに手を貸してもらい引っ張り上げて貰いながらレンが仕切る。このパターンは比較的しょっちゅうあるのだが、ファイは俯いて眼前の二人の後を追いかける。
二人を軽んじて見た自分を、恥じるように。
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