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きし、と小さな音を立ててつぶれた白雪にカインは白い息を吐いた。
雪山。今回の標的(と言うか観察対象)のクシャルダオラがいるだろう土地だ。
今カインたちのいる麓はともかく、山頂に行くにつれて激しく吹き荒ぶ吹雪は万物を凍らせ生きることさえ困難にさせる魔の領域だ。そこにも僅かながら生態系というものが存在し、植物ならば雪山草、それを餌にするポポやガウシカ、さらにそれを食らうフルフルや群れを統率するドスブランゴやドスファンゴが我が物顔で闊歩する。
そして、古龍種であるクシャルダオラはその頂点に君臨する。
そんな相手を観察、場合によっては交戦しなければならないと言うのにレンは浮かれっぱなしだった。
調子の外れた鼻歌を歌う親友にカインは思わず哀れみさえ篭った目でレンをみた。
「♪〜♪〜♪〜」
「・・・レン」
「んー?」
「黙りなよ。聞いてる僕が恥ずかしい」
遠まわしに音痴と言ったカインの真意さえ気づかずレンは上機嫌に調合を続ける。案の定、閃光玉はただの燃えないゴミと化した。
しかし、今日はそれも気にならないのだろう、ぽいと後ろに失敗したそれを投げ捨てて別の材料に手を出したレンにカインはもうため息しかでない。ちなみに燃えないゴミはファイの頭に直撃したわけだがレンがそれに気づいて謝ることはなかった。
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