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がらがらと音を立てながら走る竜車を、一体何回聞いたのだろうとファイは後ろへ流れていく風景を眺めながらレンとカインの様子を眺めていた。
ファイの忠告を聞こうとしたがレンに押され折れたカインが興奮気味のレンの相手を気だるげにしている。胸中で鎌首をもたげた暗い感情は無視。きりがないと思ったからだ。
それでも、理性の蓋を押し上げ自分の頭を支配しようとする感情にファイは舌打ちをしたくなった。しかし、そこは片手剣の刃を砥石にわずかにぶつけることで解消することに成功した。
未だに言葉の途切れないレンの相手をしているカインを見ながらファイは他人からではわからぬ程度に首をかしげる。
自分が他人に、異性にここまで執着したことがあったろうか?
答えは否、他人はもとより他の命にさえ興味がなかった。アノトプスを殺してその肉を食らうのは自らの生きる糧にするためだし、害成す獣がいるのなら自らの安穏のために殺す。それがさも当然で、それは人間間でも同じだと思っていた。
だというのにこの男は会って少ない時間でファイの概念を作り変えてしまったのだ。
(私はカインが好き。でも、カインはどう思ってる?)
作り変えられてしまった相手にだからこそきっとこんなことを思うのだと思っているファイは知らない。
恋した生き物とは、知らぬ間に相手の気持ちを気にするものなのだ。
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