D×D Bypar | ナノ




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いつも賑やかな酒場は、今日は特に騒がしく、どこか気まずげな空気をかもし出している。

そんな周りには目もくれず、ファイはお茶をすすり、エルベの奢りである饅頭を口に放り込む。
大方、大きな依頼が入ったんだろうな、とそれだけ考えてファイは口の中でとろける蜂蜜と餡を楽しんでいた。
しかし、たまたま同席していた彼らはその空気を素通りすることはできなかった。
片方は耐え切れず掲示板の方へ歩いていきもう一人はそわそわと落ち着かないと言った体で果汁を絞り炭酸で割った物をちびちび飲んでいた。

「なんだろ・・・?なんのクエストかな・・・?」

そわそわと落ち着かないのはカインその人で、ファイは思わずいらっとする。
落ち着きのないカインにではない、自分がいるのに余所見をするカインにだ。

あの収穫祭以降、ファイがカインといられる時間といえば、この酒場で食事を取るときか、もしくは仕事のときのみ。しかも最近カインともう一人、レンは最近では大型モンスターを狩ることができるくらい上達していた。だからだろうか、ファイとの狩猟回数が減っている。気がする。
いや減ってはいるが、本当にわずかな回数であってファイが苛々するほど減ってはいないのだが。

(・・・と言うか私、カインと二人だけでクエスト行ったことない・・・?)

はっきり恋愛感情を自覚したファイはそんなことさえ考える。以前なら考えもしなかったことだというのに今や彼の親友、それも男に軽い嫉妬さえ覚えてしまうほど幼稚な感情は、ファイをわずかに苦笑させた。

(・・・ああ、馬鹿らしい)

それでも心地いいその感情を捨てずにいるのは、たとえ独りよがりでも彼を思う間は幸せなのだ。
あまりに自分勝手な思考回路に思わず吐き気がしたファイは、興奮したレンが駆け寄ってくるのを見た。




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