D×D Bypar | ナノ




3

一方レンも迷っており、こちらもカインと同じような事を考えていた。しかしぶん殴る対象がカインと言う辺り、この男に自分が悪いんじゃないかという考えはないらしい。
しかしはぐれたのが他の人間ならばレンも自分を責めたろう。しかし対象がカインでは−−−−ある意味病気じゃないかという位の方向音痴相手では仕方ないのかもしれない。
要約すると、迷子はレンではなくカインなのだ。

「ったく、どこいきやがったあの馬鹿は」

青筋を浮かべながら人ごみを掻き分けていくレンの勢いはドスファンゴよろしくもしくはティガレックスにも匹敵していたのではないだろうか。

目立つ銀髪を探しており周りなど気に留めていなかったレンはやはりというか何と言うか、人にぶつかった。

「ぅわっ!?」
「おぉ?」

分厚い胸板に顔面から激突していったレンはあまりの激痛に一瞬鼻骨がへし折れたのではと錯覚する。

「おお、すまん。大丈夫か?」

頭の上からふってくる謝罪にレンは漸く頭を上げる。
まず最初にヒゲが見え、その次にカインとはまた別の人好きな容姿が視界に飛び込んできた。
深緑の髪に白髪はないが、自分より明らかに一回りは年輩だろう男がレンを気遣わしげに覗き込んでいた。
さすがに心底心配しているらしい相手に逆ギレする非常識さなど持っていないレンは慌てて謝る。

「すっすんません!よそ見してて…」
「いやいや構わんぜ。お前さんこそ大丈夫だったか?物凄い勢いだったが」
「大丈夫っす、鼻も折れてなさそうだし」

レンの真面目だがどこか抜けた返答に男は笑ってそうかとレンの頭をぽんぽんと叩く。

「所でお前さん、何をそんなに慌ててたんだ?ファンゴが街に入り込んだかと思ったぞ」
「俺の友達が…ってあ!!カイン!!」

ぶつかった拍子に忘れていた目的にレンは再び青筋を立てていた。
その様子だけで何となく事情を察したらしい、男はまあまあとレンを窘めた。

「そう怒りなさんな。何ならぶつかった縁と詫びだ、俺も一緒に探そうじゃないか」
「え、でも…」
「安心しろって。後で何かせしめるつもりなんてないぜ?」
「そうじゃなくて、今会ったばっかなのに悪いって」
「会ったばかりだからこそ、だ。俺は縁って奴を大事にする主義でな。お前さんとぶつかったのもなんかの縁だ、大事にしておいて損はないだろう」

男はやはり人好きのする顔でにか、と笑う。それを見ているとなんだかレンまでそれで良いかもしれないと思ってしまうから不思議だ。
そして、そこまで言ってもらって断るのも逆に悪いかとレンは好意に有り難く甘えることにした。

「じゃあ頼んでいいっすか?」
「もちろんだ。俺はケビン、お前さんは?」
「レン。探してる奴はカイン、派手な白髪っすよ」

レンの、今度は思いっきりの冗談にケビンはそうかと笑みを返した。




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