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まるで砂漠のオアシスに住まう女性のような衣装を身に纏ったファイは太刀”飛竜刀 紅葉”を片手に僅かに気を練る。
その姿でさえカインを魅了するというのにファイを太刀を巧みに操り舞ったのだ。
赤い刃は空で赤い軌跡を描き、しなやかな身体は妖艶はないのに、むしろそこからかけ離れた美しさをただひたすら体現する。
この世で一番美麗な真紅だと、カインは思った。
そして、もうひとつの事実には全く気がつかない。
ファイは、ずっとカインを見て舞っていた。まるで今宵の舞はお前のものだと言わんばかりに。
踊っていても、ファイにはカインを見つけられたのだ。
(わからない訳、ないよ)
あのやさしい白銀を。自分とは対照的なきらめきを。
(見逃すわけ、ないよ)
きっと聞こえない、きっと見えない。
だから告げようひっそりと。
「 」
そして、彼女は彼に、ひそやかな恋を告げる。
それは彼には届かなかったけれど。
夜は明け人々は祭りでにぎわう。
その中にどことなく幸せそうなファイが誰かと祭りを楽しんでいると知っているのは
どこにいるとも知れないカミサマだったりする。
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