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(・・・なんだったんだ、あいつは)
迎えの竜車の中、眠りこけているカインとレン、剥ぎ取りで入手した火竜の鱗を手の中で弄ぶファイを尻目に、ケビンは首をかしげていた。
(なぜ俺たちを襲わなかった?)
あの小ばかにしたような視線から察するに、格下には完全に興味がないと言ったものだろうが、それでも捕食さえ怠ったのにはいささか疑問が残る。
生態系ヒエラルキーの頂点に君臨する生物とはいかなときでも食欲には貪欲なのだ。
とにかく無事でよかったとケビンが一息ついたときだった。
「・・・エルベに怒られるね」
「ん?」
突如口を開いたファイにケビンは疑問符を浮かべる。そんなケビンが絶叫したのは、ファイの次の一言だった。
「昨日だったよね前夜祭。間に合わないね」
睡眠中のカインとレンの鼓膜が、破れんばかりに震えた。
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