12
ざっざっと、走るたびにほんの少し湿気た土が音を立てて後ろへ飛んでいく。
かつんかつんと足装備に当たる小石の音を聞きながらいつぞやのように、カインとファイが走る。
「・・・」
「・・・」
先ほどからこの沈黙が、痛い。
別に何かあったとか言う訳ではないけれど、カインはファイからひしひしと、負のオーラのようなものを感じ取っていた。
少々余談だが、カインよりファイのが体力はあるし走る速さも早い。その気になればカインを置いて先にリオレウスの元へ行き罠を仕掛けることも可能だ。
しかし、しかしだ。ファイはカインを追い抜こうともせず淡々と、実に淡々と邪気(最早そう言う表現しか思いつかない)をカインに向って放つ。
走り始めて約20分、カインは根を上げた。
「・・・どうしたの」
「・・・」
足こそ止めずに背後のファイを振り返り声をかけるが、ファイは無言。しかも、能面でカインを見ながら走っている。
前回、ファイを怒らすようなことをした記憶があるが、あの時以来その話はせず、ファイも平気な顔(と、言っても相変わらず眠たそうな顔だった)をしていた。それなのに、急に怒り出したのか。
「あの」
「何で庇った」
再び声を掛けようとしたカインの声を遮って、ドスの聞いた低い、地獄から這い出るような声でファイは質問を投げ返した。
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