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がたがたと竜車に揺られながら、ケビンはエルベの言葉を反芻していた。
もし、仮に二頭同時に同じエリアに火竜が現れたならば、逃げるだけの隙を果たして自分は作れるのか。
最悪、自分を犠牲にして三人は素直に逃げるのか。
逃げ切る事も大切だが、何よりカイン達が逃げると言う"手段"をちゃんと選べるかが今回のポイントとなる。
何故なら、カインもレンもファイも若い。若気の至りで立ち向かってしまったら全滅も考えられる。
力もなく立ち向かうこと、それは只の馬鹿のすることだ。
そうやって、日常から消えて行った狩人をケビンは知っている。
だからこそ、彼等にはそうなって欲しくないのだ。
「ケビン、どうした?」
ファイの機械的な声にケビンは我に返る。顔を上げると、ファイがじぃっとケビンを見ていた。カインはリオレウス討伐に興奮しているレンの相手を、うんざりと言った体でしていた。
「体調が優れないのか?」
「いいや、ちょっとぼんやりしていただけさ」
「…しっかりして。死ぬよ」
「はは、手厳しい」
ファイの毒舌を適当に流しながら、ケビンはリオレウス討伐の為に策略を巡らせた。
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