9
レンが目を覚ましたのは完全に日が落ち、星が瞬く夜になってからだった。ベースキャンプの簡易ベッドの上で上体を起こし、頭をふる。
「…いって」
掠れた声でそういうレンの身体はあちこち擦り切れていた。
誰かがレンに同意した。
「確かに痛そうね」
「エルベ…なんで」
「チャチャが気絶してるあんたを見てて欲しいって私を呼んだのよ。何しろ、リオレイア希少種がいるからって」
「…そっか」
「あの子いい子よ、あんたの変わりに一人で飛竜の卵取りに行ったの。囮にして、レンを疲れさせたのは自分だからって」
「…大丈夫かなあいつ」
「大丈夫よ、だって」
エルベがそう言った途端、茂みががさりと揺れ、ふらふらとチャチャが戻ってきた。
傷だらけのその腕に抱えていたのは飛竜の卵で。
火傷のあとがあることから、リオレイアに見つかったのは言うまでもないだろう。
それでもチャチャは帰ってきた。
チャチャの小さな身体がぐらりと傾く。レンが慌てて卵ごと支えると、チャチャは小さな寝息を立てていた。
「…案外、二流ハンターよりは強いんじゃない?」
「…そうかも」
すぴすぴと眠るチャチャの頭を撫でながら、レンは少し笑う。
「さて、クエストも終わりだし帰りましょうか!」
「おう…ん?」
チャチャを抱えて立ち上がったレンは違和感を覚えた。チャチャにではなく、卵にだ。
なんだろうと二人が覗き込む。
そして、非常事態が起きた。
「「えええええええええええええええ!!?」」
二人の絶叫がこだまする中で、チャチャだけが穏やかに寝ていた。
[ 99/200 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]