クレイジーイーター | ナノ




5

ファイは自室へ飛び込むと素早くロックを掛け、ソファーへとなだれ込む。背中と左肩の痛みを無視して置いてあったタオルケットに包まった。同時にずくりと痛む下腹に、自嘲気味に笑う。

「……出血サービスデー、か、今日は…」

だくだくと流れる血の感触と痛みに堪えながら無理矢理眠ろうとする。
だが、それは二人の来訪者によって妨げられた。

ノックも無しに飛び込んできたソーマとコウタに、そうだ神機使いは開けられるんだったと失念していた自分に内心舌打ちをしながら二人を睨み付ける。

「ファイ大丈夫?痛くない?」
(煩い痛いに決まってるだろ)
「血少なくなって寒気とかしない?」
(寒いからタオルケットに潜り込んでいるんだ)
「…何とか言え」
(煩いそんな体力ないんだよ!)

言い返す気力もなくただひたすら無言を貫いていたファイの耳朶に、ソーマの抑揚のない声が突き刺さる。

「背中の火傷は、どうした」

その言葉を聞いた瞬間、ファイの体がびくりと跳ねた。
思わず起き上がり後ろに後ずさり背もたれに背中を押し付けたファイに二人の視線は訝し気な物に変わる。
あからさまに、背中を隠そうとしている。
困惑するコウタはともかく釈然としないソーマは強行に走った。
ファイの右腕を引き前へ上体を倒すと首の後ろを鷲掴み前屈のような体制を取らせた。

「ソーマ!?何して…っ!」

あらわになった背中にコウタは思わず息を飲む。
そこには、タバコを押し付けたような火傷が無数にあった。所々痂になっていたり膿んでいたり、膿を掻きむしったような傷まであった。昨日今日の傷ではない。
見られたファイは諦めており抵抗する気にもならず、しかし忌々しげに唇を噛み締めた。



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