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事の発端は、ファイがコウタにバガラリーのイラストを描いてくれとせがまれたときだった。
珍しくその日はリンドウも非番で、その現場に居合わせていた(例によってコウタに巻き込まれたのだが)
かりかりと動く鉛筆と、時間の経過とともにバガラリーのキャラクターたちが紙面に描かれていく。
その様をまじまじと見ていたコウタだが、ふとファイの顔を見た。
そして、人懐っこい目をまん丸にしてファイを凝視した。
最初こそは放って置いたファイだったが、だんだん気になってきたようで、眉間に皺がじわりじわりと増えていく。それに気づいたリンドウはコウタにあまり見るなと言おうとしたが、それより早くファイが口を開いてしまった。
「・・・見られるの嫌い」
「え?あ?ああ、ごめんごめん」
ぼそりと呟くように文句を言うファイにコウタは帽子の上から頭を掻く。しかし、やはりファイの顔が気になるようで、その目はファイから離れることはない。
流石にいらっとしたファイが再び同じ事を言おうとした瞬間、コウタが先に口を開いた。
「やっぱり色変わった!」
「!」
ずいっと顔を近付けたコウタをのけ反りながらかわすファイと、二人のやり取りをぼんやり眺めていたリンドウがぎょっとする。
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