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後日。
「ねぇコウタ、今度の配給プリンが出るの、知ってる?」
ミカドの幾分か砕けた口調がアリサの耳を抜けたと思ったら、コウタの嬉しい悲鳴が鼓膜を突く。
「えぇ!?マジで!?」
「もちろん嘘」
「オイ」
「でもさ」
すっとミカドがコウタに差し出したレーションに、アリサも思わず目を見張る。
『プリン味』
やや幼い感じのパッケージにはそう書いてあって二人は目を丸くする。
「レーションにプリン味と苺パフェ味が出たのは本当」
ミカドの手の中のひとつのレーションが二つに分裂し、プリン味と苺パフェ味のレーションが二人の前に出てくる。よろず屋が律儀に張っているシールを見る限りくすねてきたわけではないらしい。
「俺、甘いの苦手だしあげる」
「よっしゃあ!やりぃ!」
「わああ、ありがとうございます!」
レーション片手にはしゃぐ二人にミカドはニコニコと笑う。しかし、二人はその場でレーションのパッケージを破いてミカドを見て。それから
「でも、甘いの苦手は嘘だよな?」
「!」
「と、言うわけで一口どうぞ」
ずい、と突き出された二つのレーションを目の前に、ミカドは敵わないなあと苦笑する。
実に数年ぶりの、心からの笑顔だった。
FIN
(数年ぶりの笑顔が苦笑か、なかなかやるな(おま ミカド過去にはアリサとコウタに絡んでいただきました。まっすぐなコウタと優しいアリサに触発されて愚息その一がいい方向へ変わっていけばいい。自己満なのは承知の上さ!←)
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