11
その後のことも、正直あまり覚えていない。
フェンリルの人間が来て部屋の惨状、母の遺体を見て、物取りと取っ組み合い死んだと思い込んだのだろう。
だが、ミカドはこういった。
『母さんも父さんも、アラガミに食べられたんだ。おれ、怖くて、どうしようもなくて』
嘘なのは、一目瞭然だ。それ以前にミカドの父はつい先日死んだことを彼らは知っている。
それでも「アラガミに食べられた」と一点張りのミカドにあわせるように話を進めていった。
ミカドも、それはわかっていた。わかっていて嘘を吐いたのはこの嘘が彼らに向けられたものではないと知っていたからだ。
この嘘は、ミカド自身の為に、ミカドが自分を騙すための、幼稚で哀れな嘘だった。
自分さえ騙せる詐欺師だと、当時はそう思って。それから彼は嘘で生きてゴットイーターになった。
[ 61/105 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]